月と日ト影

170114

これは日記である、と言い張る

シジミのお味噌汁。

ザルに入れて水で洗う。貝と貝がぶつかり合いガラガラと音がなる。そのあと塩をいれる。少ししょっぱいくらい。どれくらいか待ったあと、その貝をまた、水で洗う。鍋を沸騰させて貝を入れ、口を開いたらほんの少し味噌を入れた。ネギも切っておく。

いただきます。

ネギの乗ったシジミのお味噌汁。湯気の立つそれを一口飲み、シジミを箸ではさみ食べる。口の中でジャリ、と音がする。慌ててティッシュに吐き出すと、ため息をつく。

また、失敗した。

24.1.14

急行誘拐

寒いですね。

階段を降りてすぐ曲がると反対側のホームに沢山の人がいました。その中で女の子が足をクロスさせて立っていました。わたしは真っ黒な格好でコロコロすれば良かったなあと眺めていました。

そのときです。

ガタンガタンとやつは現れました。反対側のホームの定位置にピタリと止まると、また動きはじめます。やつが去ったあと目を向けると、誰もいなくなっていました。

なんだか悲しくなったので、わたしも目の前に来たやつに乗り込みました。

31.1.14

タ、タン

タ、タン、タ、タン、タ、タン。

電車の音。彼女は電車の音は苦手ではなかった。踏切の音も平気だった。けれど、電車に座っていて窓を見ているとき、反対側から来た電車と乗っている電車の風圧で、窓が大きな音を立てるのはどうしても苦手だ。

人身事故も人が立ち入ったこともなく、欲をいえば具合が悪いとき席を譲ってくれてもいいだろう、とドアの隅に座り込んでしまったことがあった。

反対の立場になってみて、彼女は席を譲ることが出来ただろうか。それはいまもわからない。

19.2.14

彼女

逃げ場がないなんて、

彼女ははらはらと涙を流しながら言います

心配してくれているのですけれどそれはわたしにとっては重荷でした

自分で巻いた種じゃないと笑ってくれてもよかった

喉に異物感がありますこれはそうたぶん精神的

逃げちゃダメなのはわかっているのです

本当は彼女は泣いてはいなかったけれど哀れんではいたのです

笑ってもくれないけれど

「考えすぎなんじゃないの?」

彼はわたしの頭を撫でてくれました

他人が言った言葉に興味はありませんけれどそれが真実だというのならば

だからなんだというのです?

7.4.14

BGM

「気付いたんだ」

「どうぞ」

「映画もアニメもドラマも、みんなBGMがあるのに、人生にはないよね?」

「そんなもの自分で決めちゃえばいいよ」

「映画もアニメもドラマもみんな新しく作り出すのに、人生はあるものから選ばなければならないのかな?」

「自分でつくっちゃえばいいじゃん。そういうひともいるよ」

「自分で」

「そう!」

「出来るかな……」

冷たいフローリングを踏むと感覚がなくなる。そろりと階段を降りると真っ暗な世界。玄関から見える街灯は柔らかく光っている。パチ、と電気をつけると眩しくて目を閉じる。ゆっくりとひらくと明るさに慣れた目は昼間のような空間を受け入れる。冷蔵庫から炭酸飲料を出すと、キャップをあけて一口飲んだ。水で口をゆすいで、電気を消した。真っ暗な世界はさっきよりも暗い。そろりと階段を登る。窓からはいるひかりが受け入れてくれているような気がして急いでベッドに潜り込んだ。こっそりと顔を出す。カーテンをしめていない窓から月が柔らかいひかりを放っていた。

7.6.14

梅雨。

寝る前、雨の日は窓をあける。

朝起きると喉が痛くなっていた。別に、これも普通のことだ。いやなのはだんだん喉が悪化していくことだ。なにをしても痛いということ。「痛い、ということに生きている、とは思いませんから。それはただの風邪なだけですから」

くれぐれも寝る前に窓はお開けなさんな。